【第12回】目に見えないコストを重視しよう

2026-09-24 11:33:59 経営コラム

コストで代表的なものとして、「原価(売上原価・製造原価)」と「経費」があります。原価は卸売業であれば仕入値、製造業であれば原材料費・労務費・製造経費のように、売上を上げるために要したコストです。一方、経費は、人件費や広告宣伝費、水道光熱費、物流費などのコストです。一般的には、原価は変動費、経費は固定費として扱われます。変動費とは、売上の増減によって変わる費用、固定費は売上の多寡と関係なくかかる費用のことです。

 

私はコストを、「目に見えるコスト」と「目に見えないコスト」に分けて考えています。「目に見えるコスト」とは、広告宣伝費や水道光熱費、物流費など、数字が目に見えるコストのことを言います。一方、「目に見えないコスト」とは、実際にお金は出ていかないけれど、時間が経過すればその分かかるコストのことを言っています。会議にかかる人件費、クレーム処理に要した人件費、書類を探すのにかかる人件費などがあります。つまり、人件費を言い換ると、「時間コスト」であるということです。「Time is money」という言葉がありますが、まさに「時は金なり」です。

 

よって、同じ時間を有益な仕事に費やすか、ムダなことに費やすかによって、生産性はガラッと変わってきます。人件費は固定費ではありますが、同じ時間でも使い方によって成果が大きく変わることから、人件費は「変動費」であると、私は考えています。「人件費は固定費だからコスト削減の対象ではない」と考える人も多いですが、人件費が変動費であるとすれば、ムダな時間を減らし、生産性の上がることに時間を費やすことによって、売上アップ、コスト削減に大きく寄与することができます。人件費は経費の半分を占め、最もウエイトの高い経費なので、ムダな時間を削減し、ムダな時間コストを減らすことが、コスト削減効果が最も大きいのです。

 

コストの金額が小さいと、大したムダではないと考える人もいるでしょうが、小さなコストでも、「売上換算」してみると、コストの重みが分かります。ちなみに、年収500万円の人の時間コストは4,000円/時と覚えておいてください。時間コストを計算する時に、何かと役に立ちます。(500万円×1.5倍(社会保険料などのコスト)÷12カ月÷20日÷8時間=3,906円/時)

 

少し脱線しますが、「コスト意識」という言葉はくせ者だと、私は考えています。なぜならば、「コスト意識を持ちましょう」と日常茶飯事、社内で言われているものの、掛け声だけで終わって、具体的なコスト削減につながっていないことも多々あるからです。コストを「数字」で考え、「数字」で表現しなければ、コスト意識は絶対に生まれません。

例えば、

・ムダな電気を消すことを全社で徹底したところ、5万円/月の電気代が削減された

・ある物品を購入するのに、3社で比較して、最も安い会社にした

・カラーコピーを原則禁止にしたところ、10万円/月のコピー代が削減された

のように、すべて数字で「可視化」することによって、コスト意識は次第に身についていきます。

 

さて、2つ例で時間コストを売上換算してみます。

 

①  年収500万円の3人がムダな会議で3時間費やした場合

 

4,000円/時×3人×3時間=36,000円の時間コストがかかります。この失われた36,000円のお金を手許に残すには、いくらの売上が必要でしょうか。(この会社の最終利益率は5%とします)

 

36,000円÷5%=720,000円

 

分かりにくい方には、

100の売上をあげると、5の利益が残る ⇒つまり、売上は利益の20倍

36,000円の利益を残すためには、36,000円の20倍の売上が必要

⇒36,000円×20=720,000円

 

36,000円の利益を手許に残すためには、72万円もの売上を上げなければならないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。大きな金額ですよね。

 

②   本来起こす必要のなかったクレーム対応で、2人で3時間、交通費4,000円かけた(最終利益率は2%)

 

4,000円/時×2人×3時間+4,000円=28,000円

28,000円÷2%=1,400,000円(最終利益率を2%とします)

 

最終利益率を2%とすると、140万円もの売上に相当します。アパレル店舗の客単価が1万円とすると、この店舗は、140人ものにお客さまに追加で販売しなければならない事態となってしまいます。気が遠くなりますよね。

 

 

以上、目に見えないコストの大切さを説明してきましたが、このような意識や考え方を社内に浸透させ、社会人としての「判断軸」を醸成していくことも、大切な教育の一環であると認識して頂きたいと思います。(執筆:現場経営の達人)