【第14回】ティーチングとコーチング

2026-10-06 11:03:14 経営コラム

ティーチング(Teaching)とコーチング(Coaching)はともに、指導や育成という意味で使われる言葉です。しかしながら、両者の内容は、「似て非なるもの」として、明確に区別しなければいけません。

 

「ティーチング」とは、知識や経験が少ない新人や若手に対して、一方的に教え込むという意味です。特に、社会人になりたての新人に対しては、「基礎」、「基本」を否応なく叩き込む必要があります。「基礎」とは土台となる知識や技能のことであり、「基本」とは物事の軸となる考え方やルールのことを指します。私は部下に、「基本に忠実」という言葉を繰り返し伝えてきましたが、その理由は、「基本」をしっかり身につけ、「基本」に忠実に仕事をすることが、社会人にとっていかに大切かということを、脳裏に刻み込んで欲しかったからです。

 

「最近の若手はこうだから、このように教えなければいけない」というような発言を耳にすることがありますが、「基礎」、「基本」を教えるのに、新人や若手に気を遣う必要は全くないと思います。新人や若手のタイプに関係なく、習得すべき「基礎」や「基本」は誰もが等しく習得しなければならず、指導する側も「基礎」や「基本」はすべて、教える義務があります。「若手のタイプ云々」と言っていないで、「信念」と「軸」を持って、ティーチングを行ってもらいたいと思います。

 

一方、「コーチング」とは、一定以上の知識や経験のある人に対して、目標を達成したり、能力を引き出したりするためのコミュニケーションスキルのことを言います。コーチングのポイントは、相手に対して、自分の頭で考えさせ、自分で答えを導かせることです。コーチングには、3つのコミュニケーションスキルがありますので、しっかり押さえてください。

 

1. 傾聴

「傾聴」とは、コーチングを行う人が相手の言っていることを最後まで耳を傾けて聴くことです。相手が話している途中で遮ったり、否定したりしたら、話している側も最後まで話したくなくなります。まずは、相手の言っていることを最後まで聴き、安心感と信頼感を与えることが重要です。コミュニケーションの第一歩は、話すことではなく、聴くことです。

 

2. 質問

先に「自分の頭で考えさせ、自分で答えを導かせる」と言いましたが、そのための質問スキルを身につける必要があります。相手に考えさせる、考える力を伸ばすための質問として、私は以下の質問を非常に重んじています。

 

①   なぜ(Why)

「なぜ」はものごとの理由、根拠、原因、背景を探るのにもってこいの質問です。ものごとの表面だけを捉えるのではなく、その原因や背景を捉えさせるとか、自分の考えに明確な根拠を持たせるなど、「なぜ」という質問によって徹底的に考えさせることで、物事の本質を捉える訓練を積ませます。問題解決は「問題の真因(真の原因)を除去すること」ですので、問題の真因をつかみ、問題解決に導くためにも、「なぜなぜ」で考えられなければいけません。

 

②   5W1H

「5W1H」とは、「When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)」です。5W1Hの質問がなぜ重要なのかというと、抜け漏れのない思考を行うため、抜け漏れなく大切なポイントを把握するためにもってこいの質問だからです。例えば、報告の際に、「いつ?」、「なぜ?」というような質問を受けるということは、5W1Hのどれかが抜け漏れしているので、コーチングの際に5W1Hで質問を投げかけることが、抜け漏れのない仕事をすることにつながります。

 

③   あなたの考えは?

主体的な人とは、「自分の頭で考え、判断し、行動できる人」です。「方法論として、3つ考えられます。1つ目は・・・、2つ目は・・・、3つ目は・・・です」と報告した部下に対して、「で、あなたはどれがよいと思うの?」と質問したら、「・・・」と回答がなかったとしたら、その人は自分の考えを持ち合わせていないことになります。正しいかどうかはともかくとして、部下に自分の明確な考えを持つ訓練を積むこと、更に「なぜ」という質問によって、考えの「根拠」を持たせることが、チームを引っ張る時、プロジェクトを統括する時などに、そのまま活きてきます。

 

3. 承認

承認とは、言葉の通り、相手を承認してあげることです。マズローの欲求5段階説の4番目に、「承認欲求」がありますが、人は他者から認められたいという承認欲求を根本的に持っています。ですから、人を教え導き、成長させたいのであれば、承認欲求を満たしてあげることが大切になってきます。相手の承認欲求を満たすために大切なことは、「ほめる」こと、「成長実感」を持たせることではないかと考えています。「ほめる」という行為について大切なことは様々ありますが、私が特に大切であると考えていることは、どんな小さなことでもほめること、その場ですぐにほめることです。ほめ言葉は生き物のようなものなので、鮮度が大切だというのが、その理由です。「成長実感」とは、半年、1年やってきて、自分が成長したことを実感させることです。いくら頑張ってきても、いくらほめられ認められてきても、本人が「自分が成長した!」と実感できなければ、指導育成が上手くいったとは言えません。「適切な目標設定を行うこと⇒部下本人が一生懸命努力すること⇒上司が部下を最大限の支援すること⇒部下が目標を達成し、成長を実感できること」というサイクルが上手く回るように、上司は部下に「伴走」していくことです。(執筆:現場経営の達人)